難治性下痢症診断の手引き
-小児難治性下痢症診断アルゴリズムとその解説-

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疾患各論2

難治性下痢症診断アルゴリズムの解説:
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neurogenin-3遺伝子異常症

1)概念・病因

 neurogenin-3NEUROG3)は,組織発生・分化における様々な局面を制御する塩基性helix-loop-helix(bHLH)因子の一つで,消化管の内分泌細胞,Panrth細胞や杯細胞の発生・分化に関与している.ヒトにおけるNEUROG3のホモ接合体変異(neurogenin-3遺伝子異常症)は,2006年にWangらによって報告された.本疾患では,腸上皮においてchromogranin Aなど免疫染色で描出される内分泌細胞(enteroendocrine cells)がなく,膵臓ではβ細胞からのインスリン分泌が障害され,先天性吸収不全性下痢と小児期発症のI型糖尿病を発症する.発生頻度は不明である.米国,トルコ,および中国から症例報告があるが,わが国での報告はまだない.

参考文献

・Wang J, Cortina G, Wu SV, et al.: Mutant neurogenin-3 in congenital malabsorptive diarrhea. N Engl J Med 2006; 355: 270-280.

・Pinney SE, Oliver-Krasinski J, Ernst L, et. al.: Neonatal diabetes and congenital malabsorptive diarrhea attributable to a novel mutation in the human neurogenin-3 gene coding sequence. J Clin Endocrinol Metab 2011; 96: 1960-1965.