ご挨拶

   当学会は、1974年に故加藤英夫順天堂大学小児科教授を初代運営委員長として創設された、日本小児科学会分科会の中でもっとも長い歴史を持つ分科会の1つです。その後、藪田敬二郎、小池通夫、山城雄一郎の各教授を経て、このたび私、松井 陽が5代目の運営委員長に就任しました。ヒトは胎児に始まり、新生児、乳児、幼児、学童、思春期、成人と成長・発達し、女性が妊娠して胎児を宿すという、ライフサイクルを繰り返しています。その成長・発達に欠かせないのが栄養であり、栄養素を吸収する消化管・膵であり、それらを代謝し、胆汁成分を腸肝循環させる肝胆道系です。したがって本学会の会員は、健康な成人に成長・発達するための、もっとも根幹をなす領域を担当していることになります。小児栄養消化器肝臓学は専門領域 subspecialtyであると同時に、総合小児科学 general pediatricsとオーバーラップするところが多い、誠に魅力的な学問です。

 栄養の分野では、タンパク質や脂肪などの栄養素が遺伝子発現を制御する事 (Nutritional Gene Modulation) がわかってきています。消化器では炎症に関与するシグナル伝達異常、腸管免疫とプロバイオティクスが脚光を浴びています。肝・胆・膵では細胞移植、再生、遺伝子治療がトピックになっています。この分野においても他の小児疾患と同様に稀少疾患が少なくないため、我々は共同研究を進める必要があります。Helicobacter pylori 、炎症性腸疾患、B型およびC型肝炎ウイルス、劇症肝不全、胆道閉鎖症などではこうした施設間協力がすでに効果を上げつつあります。どうか単独の施設にとどまることなく、多施設共同研究を運営委員に提案してください。

 一方、日本小児科学会では中核病院、地域小児科センターを中心とする小児医療体制整備計画を提唱しています。これらはそれぞれ人口200から300万人および50万人当たりに1箇所の病院に小児科医を集約的、重点的に配置して、小児科医の不足に対応しようとする計画です。過疎地域にはまだ解決すべき問題を多々抱えているものの、現状を放置しては進行する小児医療の崩壊を防ぐ唯一の処方箋といえます。小児栄養消化器肝臓学会の会員はこれらの病院において自らの存在意義を主張する必要があります。我々の担当する入院患者さんの数はそれほど多くないでしょうから、何らかの対策を立てなければなりません。

 そこで小児栄養消化器肝臓病学の特長を生かして、一方では総合小児科医として機能するとともに、他方では栄養、消化器、肝臓のsubspecialty領域を担当することを考えてほしいのです。私ども運営委員会はこの任期を通して、主として学術委員会がこの subspecialty 専門医の資格試験および認定施設の検討をする予定です。それらの制度は国民の皆さんがどの専門医を受診したらよいかの標識になり、私どもの学会の団結を強め、構成員の存在意義を高めるものでなければなりません。学会員の皆様の英知を集めてこの困難な事業を進行させたいと思います。ご協力をお願いします。

2007年10月吉日

          日本小児栄養消化器肝臓学会運営委員長 
          松井 陽(国立成育医療センター病院長)